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都市伝説「コーラ骨格溶解説」は何故作られたのか

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夏は、コーラが特においしい季節である。
コーラといって、まず最初に諸兄が考えるのは「骨が溶ける」という都市伝説であろう。
実際にコーラを飲んで骨が溶けた人間を目撃した事はないが、火の無いところに煙は立たない。
このコーラ骨格溶解説について考えてみよう。

目次

コーラで溶ける骨

まず、事実から考えよう。
コーラが世界一普及しているのはメキシコであり、特にサン・クリストバル・デ・ラス・カサスは、「水代わりにコーラを飲む」といわれるほど、驚異的な消費が行われている都市である。
ここは、水源をコカ・コーラ社が独占する代わりに、コーラが安価に提供され、インフラへ多額の出費もされ、コカ・コーラの否定は伝統の否定と認識されるという、端的に言うとディストピア都市である。
ここに住む人間の死因が骨粗鬆症など、骨格に関係するものであれば、都市伝説の事実を補強する材料となり得る。

結論としては、この都市の主たる死因は糖尿病、次に心臓病である。
従って、事実ベースで言えば、コーラが溶かしているのは血管であって、骨ではない。

では、コーラは骨を溶かせないのだろうか?
これは単純な事だ。
「飲用しても溶かせないが、浸ければ溶ける」
日本のコーラ販売の一角である、ペプシコーラを扱うサントリーのQ&Aにおいて「骨をコーラなど、酸を含んだ液体に浸けると、カルシウムやマグネシウムが溶け出す」との回答がある。
脱灰と呼ばれる化学現象で、有り触れたものだ。
小アジの南蛮漬けなどで、「骨まで食べられる」ようになるのはこの作用だ。

人間の骨は皮膚に守られているため、「浸けて溶かす」事は出来ない。
唯一可能性があり得るのは、歯である。実際虫歯も、ミュータンス菌が作る酸による脱灰だ。
これをコーラで再現するなら、口に含んだままにしておけば、幾らかは溶ける可能性はあるだろう。
もっとも、そんなに長く口に入れておく事は、「コーラを飲む」行動とは別のものだ。

昭和概念

都市伝説は、事実よりも「どう信じられていたか」も重要である。

かつて、「酸を飲むと骨が溶ける」というイメージが持たれていた事は事実である。
「サーカスに売られた子供は、身体の柔軟性を高めるため、酢を飲ませられる」
というのは昭和期の常識的概念である。

ここでいう「身体が柔らかくなる」は、関節の可動域が広がる事だが、昭和における関節のイメージは非常に大雑把だ(ガンプラの関節数の変遷を考えると理解しやすい)。
従って、炭酸とクエン酸が含まれ酸味を伴うコーラに、「骨を溶かす」という性質があると考えるのは、それほどおかしな発想ではない。

だとして、だ。
コーラは企業が売り出す商品である。
商品に事実無根の悪評が付けられながら放置されるだろうか。
敢えて許した、何らかの意図があると考えるべきではなかろうか。

そもそも骨は溶けるもの、ミルクをとろう!

都市伝説の仕掛け人

日本におけるコーラの歴史は、1914年に遡る。
当時は、海外の洒落た飲み物といった扱いで、芥川龍之介も言及している。
コーラが実際に日本で製造販売されたのは、戦後の事である。

1956年に東京飲料株式会社がボトラーとなり、1963年頃になってようやく、安定的に流通に乗り、ビジネスとして成り立つようになった。
これは1964年の東京オリンピックに便乗した「オリンピックキャンペーン」によるところも大きい。
番組提供の他、聖火リレーをボトラー社の車両が追走や先導し、テレビへの露出を増やした。

一方、「骨が溶ける」という都市伝説はそれから間もなく。1970年代に発生したものだ。
つまり、コーラがある程度社会に定着し、当たり前の飲料となり始めた時期と言える。
海外の洒落た飲み物としての権威はなくなっていたが、子供にも馴染み深い商品として、その流通量は増加していく。

カフェインを含むコカコーラは、子供にとっても依存的に好まれた可能性はある。だが、自動販売機で販売される際の100円は、決して少額ではない。
親にとって、あまり褒められた飲み物でないのは確かだ。
「コーラを飲むと骨が溶ける」というのは、子供からコーラを遠ざけるのには都合の良い噂だ。
むしろ、親の間から出た噂の可能性もあるのではなかろうか。話が大きくなり、規制されれば大成功だ。
しかし、そう結論付けるのは少々早計だろう。
規制はPTAのレーゾンテードルだが、全ての規制がPTAのせいというのは、ちょっぴり言い過ぎだ。

そもそもPTAの仕込む規制の最重要事項は、「親である自分達に(直接には)不利益がない事」である。
コーラの噂が拡大すれば、容易に炭酸飲料全体に広がり得る。
つまり、ビールやスパークリングワインまで同じ文脈で規制されれば、PTAにとっても多大な不利益となる。

何を隠そうとしたのか

この噂は、企業、すなわち財界の意図を感じざるを得ない。
当時の財界は、メディアの三本柱、テレビ、ラジオ、新聞を広告費で完全に牛耳っていたのだから、情報操作は容易い筈だ。そこをすり抜けて抜けて情報を流布させたと考えるより、財界自体が情報の流布に肯定的だった考える方がよほど自然だ。

結論から言えば「コーラは骨が溶ける説」は、財界が仕掛けたものではないだろうか。

財界は、下級国民達の骨が溶け始めた時、それを企業のせいにされる事を危惧した。
このため、新参であり毒々しい色の、酸を含む飲料、コカ・コーラに全てを肩代わりさせた。
何の肩代わりか・・・酸性雨である。

1970年年代から1980年代にかけ、大気汚染を原因とする酸性雨のピークにあった。
夏の晴れた日の午後、町内放送で光化学スモッグ警報が発令されるのは、都市圏の昭和キッズにとって日常的な情景だった。酢を飲めば身体が柔らかくなると信じる昭和人にとって、酸性雨が水源地に降る事は、骨が溶ける事と同義である。
知識人である上級国民はともかく、下級国民は容易に短絡させる。
こうなれば、パニック状態からの不買運動、企業活動への大きな制限が加わりかねない。

時まさにベトナム特需である。
アメリカが勝つにせよ負けるにせよ、日本企業としては売れる物は端から売って、国際競争力を付けたい時期である。
その勢いを殺してはならない。
国のために生産を続けたチッソはどうなったか。メディアを牛耳っているといっても完璧ではない。民衆は愚かだが数が多い。共産主義者に扇動されれば、安保闘争の二の舞だ。
だからこそ、財界は先手を打った。
酸性雨が知れ渡った時に起きるであろう「骨が溶ける」という風説を、先にコカ・コーラに押しつけた。
下級国民は熱しやすく冷めやすい。
先に「骨が溶ける」ネタを流し、噂をピークアウトさせておけば、後から酸性雨の話が出ても、「おっくれってるー」で終わりだ。

無論、コカ・コーラには、多額のバーターが提供されたろう。
このため、コカ・コーラはこの風説をやんわりと否定するに留め、下級国民は疑いの目を持ちつつ、実際の被害がない事から、噂以上のものにはならなかったのである。

その後、ベトナム戦争は終わり、たっぷり稼いだ企業は、酸性雨の話題を解禁する。
株主を納得させ、大気汚染対策の投資も行われるようになり、酸性雨問題は解決方向へ進んでいった。
下級国民は、酸性雨をよくある環境問題の1つと受け止め、パニックは防がれた。

骨格溶解説を信じたい人々

そして現在となり、コーラで骨が溶けると思う人は。
――どうやら、まだいるようである。
販売会社のQ&Aに、未だにこの質問が掲載されている。
それを見た事で「本当は溶けるのでは」と思う界隈の人はいる。嘘でさえ、耳に残っていれば信じる人がいる。人は信じたいものを信じる。

これは骨が溶けるより、ずっと恐ろしく、興味深い事である。

参考:
サントリー お客様センター
コカ・コーラカンパニー 日本におけるコカ・コーラビジネスの歴史

※画像はイメージです。

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