怪奇現象の中で、ドッペルゲンガーは恐ろしいものの上位と言える。
何かをしてくるのではなく「出会えば死ぬ」という、百鬼夜行が如き直接的な悪影響がある、とされるからだ。
ここから生き延びるため、我々はどのような手が打てるだろうか。
ドッペルゲンガーとは
ドッペルゲンガー(Doppelganger)とは、ドイツ語の「Doppel(二重)」「ganger(歩行者)」を語源とし、「二重の歩く者」といったニュアンスになる。
大学生の中に留年を「ドッペリ」と言う人がいるが、同じ学年を「二重」に過ごすという訳で、語源は同じだ。
ドッペルゲンガーという語句自体は、ドイツの作家、ジャン・パウルによって1796〜1797年に発表されたロマンス小説『Siebenkas(ジーベンカス)』が初出とされ、「Doppeltganger」という綴りで登場している。
但し、ここに出て来るドッペルゲンガーは、主人公にそっくりな友人であり、怪異というニュアンスは薄い。
「金属の機械人形」をロボットの定義と考えるのと似た、語句だけが独り歩きした状況となっている。
怪異としてのドッペルゲンガーは、顔かたちが自分と同じ存在を指す。
分身や変身など、随意による術とは別個に扱われる。
「誰かとそっくりな人間」というモチーフは、古来から神話や伝承に散見される。
独立した怪異と解釈される事もあれば、霊魂が分離・実体化したものとも解釈される事もある。
医学分野でも、「もう1人の自分」が見える現象は研究されている。
脳の損傷(事故や腫瘍など)の場合もあれば、統合失調症や譫妄による場合もあるが、いずれにせよ「幻視」とひとまとめにされる。
ドッペルゲンガーが、他人によって目撃される例はどうか?
これなら客観的な存在のようだが、「目撃者」は増えるほど、同調圧力による歪みが生じるものだ。
最初の1人の発言力如何で、同調はいくらでも起きる。つまり、幻視はたった独りを惑わせれば良い。
途中で幻視に過ぎないと破棄された例もあろうが、結果として記録に残ったものが、生存者バイアスによって、ドッペルゲンガー伝説を補完していく。
何故、ドッペルゲンガーは「恐ろしい」?
ドッペルゲンガーを恐ろしいものたらしめているのは、「出会うと死ぬ」という伝説である。
医学においては、脳腫瘍が進行し、死が近くなった時、ドッペルゲンガーを見て、間もなく死ぬ、というプロセスが考えられる。
精神疾患の場合、ドッペルゲンガーを見る程に見当識が障害されていれば、危険を見落としやすくなり、事故の確率は増え、これが死を招く事は十分あり得る。
では、オカルトではどうだろうか。
霊魂が分割された場合
霊魂が分割され、片方がドッペルゲンガーになっている場合、魂が半分持って行かれて弱っている状態と言える。
人間、筋力を半分失えば立って歩くのも困難だ。霊魂も同様の「弱った」状態になるのは想像に難くない。
ちょっとした事で死ぬ状態であるから、これは「見たら死ぬ」というのも分かる。
もう1つ、ドッペルゲンガー側の行動が原因になる場合もある。
霊魂の分割がドッペルゲンガーに有利な形で行われれば、あなたに勝るドッペルゲンガーは、あなたの立場を乗っ取ろうとするかも知れない。
この争いで肉体を持つあなたが負ければ、死体が残り、第三者からの観測では「ドッペルゲンガーに遭って死んだ」となる。
怪異型ドッペルゲンガーの場合
ドッペルゲンガーが独立した怪異の場合、少し事情が異なってくる。
怪異型ドッペルゲンガーは、本来的にあなたと繋がりはない筈だから、あなたを認識して襲う必要がある。
この「認識」が重要だ。
あなたがドッペルゲンガーを認識する時どうするか。
自分の顔を瞬時に認識出来る人は少ない。顔をまじまじと見て、ようやく確信に至る事になる。
この時、どうしても目を合わせる事になるだろう。
これによって、怪異型ドッペルゲンガーは、あなたを標的と認識し攻撃に移る。
強力な怪異型ドッペルゲンガーの場合
本当に「見る」だけで人を殺すタイプのドッペルゲンガーもあり得なくはないだろう。
ギリシャ神話におけるメドゥーサは、彼女の姿を見た相手を、石に変えて殺すという魔力を持っていた。
怪異型が、そのような力を持っていたとするなら、見て即時に死ぬ可能性はある。
ただ、この場合、ドッペルゲンガーとかそういうものは関係無く、存在がそのまま大量殺戮になってしまう、殺生石か象の足のような怪異と言える。
ドッペルゲンガーから生還するには
それぞれのケースで、生き残る方法を考えてみよう。
まず医療型の場合。
これは、主治医に相談するのが一番だ。
ドッペルゲンガーが恐ろしく思えても、受診を止めろと脅してきても、強い心で立ち向かう必要がある。
もちろん、脅しの内容も主治医に伝える事が重要だ。
自他の認識が歪んで、座標感覚が鈍り、交通事故に遭う可能性が高いため、病院に行く時は、家族の運転やタクシーを使うのが鉄則である。
運転手がドッペルゲンガーに見える可能性はあるが、そこは我慢して乗る事だ。
霊魂分割型の場合。
これはかなり厄介だ。
見た時点で既に霊魂が弱まりきっている。ドッペルゲンガーが直接的に殺さなくても、流しの悪霊に小突かれるだけで死にかねない。
だとすれば、対策よりも予防が有効だ。
霊魂の分割に明確な原因は語られていないが、「心が2つ」必要になるような状況を避けるというのは、重要な事だろう。嫌う気持ちを押し殺して人と仲良くしたり、自分の正義に反する仕事を続けたり、といったストレスは、魂を割る可能性がある。
これを回避するためには、他の味方を作ったり、転職に向けて活動を始めたり、身1つでいられるよう手に職を付けたり、財産をある程度確保しておいたり、といった動きが有効だろう。
ストレスは、完全にゼロにはできなくても、改善への希望は、ストレスのピークを先送りにしてくれる。
そして怪異型の場合。
見るだけで殺される強すぎる怪異型は、出会ったら死ぬので、考えても意味はない。というより、対処を考える余裕がある時点で、そのドッペルゲンガーは「弱い」側という事になる。
この時、ドッペルゲンガーに認識されない事が重要だ。
怪しいと思った時点で、確認をしようと思わず、何食わぬ顔で現場からさっさと立ち去るのが一番だ。
何かしら決着を付けないと、一生追われるのでは、と思う必要はない。人間は、千差万別、そして万年単位の歴史がある。怪異型ドッペルゲンガーが、今日この日に、あなたと同じ姿をしているというのは、気まぐれにやっているだけの事だ。
飽きたらすぐ別の顔になる。そういうタイプの怪異と考えなければ、辻褄が合わない。
さもなければ、最初の1人を殺した段階で、その怪異はただの人の姿をした怪異でしかなくなり、ドッペルゲンガーとしてのアイデンティティを失ってしまうのだ。
根拠のない恐れを落ち着かせるもの
ドッペルゲンガーは、幻覚を含めてその大半が見間違いだ。
それでもどうしても、ドッペルゲンガーとの遭遇が怖いと考えるなら、これらの対策を参考にしてみると良い。
無論、祈ったり塩をまいたり護符を持ったり、何らかの宗教的儀式に力があると信じるなら、それをやってみるのも良い。
そういう儀式は、ドッペルゲンガーに遭いそうな時に予めやっておくと効果的だ。
何しろ、強力型ドッペルゲンガーは、見かけただけでゲームセットなのだから。
※画像はイメージです。


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