少し前、ウェブ広告に「変な家」という漫画がチラチラ出ていたが、この度元ネタの動画を視聴した。
ウェブ広告⇒二次創作の動画をゲーム化したもののプレイ動画⇒別件で見た映画評論動画⇒原作者動画に辿り着くという、割と遠回りをしたが、なかなか面白いミステリーであった。
図面から隠し部屋に気付くのは、3Dダンジョン探索RPGの定番なので、結論が突飛だとしても理解しやすく、納得感がある。
さて、「変な家」というと、オカルト界隈ではウィンチェスター・ミステリー・ハウスが最初に挙がるだろう。
このウィンチェスターハウスについて考えてみよう。
ウィンチェスター・ミステリー・ハウス
ウィンチェスター・ミステリー・ハウスは、アメリカのカリフォルニア州にある「幽霊屋敷」である。
この建物は最初、ジョン・ハムという男が所有する、8部屋の農家だった。
だが、これをサラ・ウィンチェスターが45エーカー(約0.18平方キロメートル)の牧場含めて、12,570ドルで買い取った。姓から分かる通り、彼女は「西部を征服した銃」の一翼、いわゆる「ウィンチェスター・ライフル」で知られる、ウィンチェスター社の二代目社長の妻である。
彼女は1866年に生まれて間もない娘を亡くし、夫のウィリアム・ワート・ウィンチェスターを1881年に亡くした。
その後の1886年、孤独となった彼女がこの家を購入した事になる。
夫との思い出があったスペインのリャナダ・アラバサに因み、この慎ましい家と牧場を「リャナダ・ヴィラ」と名付けた。だが、娘と夫以外にも、身内の人々をも失った彼女は精神的に不安定となり、迷信にのめりこむようになった。
そんな彼女に、とあるボストンの霊媒師が助言した。
これらの不幸な離別の原因は、ウィンチェスター社の銃によって殺された人々の呪いである、この呪いから逃れる為には、西に旅してその果ての場所で「家を建てる」事である。
新設された区画によって悪霊は迷い、サラに辿り着けなくなる。
だが、建設を終わらせれば、やがて悪霊は迷路を読み解き、彼女に死をもたらすだろう、と。
これによって、リャナダ・ヴィラには様々な建物が不規則に増築されていき、ついに160の個室、2つの地下室、47個の暖炉と17本の煙突が作られた、「ミステリアス」な家となった。
この「魔除け」のお陰か、彼女は1922年、すなわち82歳まで生き延びたという。
アトラクション「ウィンチェスタ・ミステリー・ハウス」
この話には、もう少し続きがある。
ウィンチェスタ・ミステリー・ハウスは、彼女の死の翌年には売却され、アトラクションとして営業が開始され、現在も営業中である。
経営者は、「ミステリー・ハウス」として収益を得るため、世間に流れていた俗説をマーケティングに利用した。
- 周囲の人の誰もが「知的で親切」と語る彼女の性格を、「精神不安で迷信深い」とし
- 「忌み数である13を好んだ」としてシャンデリアやフックの数を調整し
- 存在を想定すると辻褄が合わない「ボストンの霊媒師」を創作し
- 当時の流行りでハウスボートを買っただけなのに、「大洪水を恐れていた」という理由付けをする
など。
経営者は、「ミステリー・ハウス」である事に価値を感じて購入、利用しているのだから、価値を高めるための「手入れ」は当たり前と言えば当たり前の事である。
端的に言えば、怪談を話す前に、「実はこの建物を建てる時、人骨が出てきたんだぜ」とか、一言を付けるのと同じだ。
実際のところCSI(Committee for Skeptical Inquiry: 懐疑主義的研究のための委員会)の上級会員である懐疑論者ジョー・ニッケルは、「ウィンチェスター・ミステリー・ハウスに幽霊が出たという証拠はない」と結論付けている。
トップ・オブ・ザ・ワールド
さて、この話を知ると、1つ疑問が浮かぶだろう。
そもそも、ウィンチェスター家では、大量虐殺者として小物ではないか、という考えである。
呪いが実在する場合、まずは最も呪われる可能性が高い相手から検証すべきだろう。
世界で最も大量に人を殺し、今もスコア更新中といえば、AK47であろう。後継機やライセンス切れ違法製造まで含めれば、1億丁に達すると考えられる。
そして発明者であるミハイル・ティマフェービッチ・カラシニコフ(1919~2013)は……命を落としている。
人間の寿命の限界が120歳程度と想定するなら、後26年は生きられた計算だ。やはり、呪いはあるのだろうか。
懸命なる諸兄は、くれぐれも大量破壊兵器を発明しない事だ。
殺された側の幽霊にとって「使ったヤツが悪い」は、通用しない事もあるのだ。
うっかり発明して儲けを出しても、まだ逃げ道はある。平和や文化のため、志ある人に資金援助する事で、免罪された例もあるらしい。
自分の発明した兵器が、大量破壊するかどうか分からない時は、身近な人に相談すると良いだろう。
設計士のような、立体的な思考が出来る人や、あなたが道を踏み外す土俵際で食い止めてくれるような力のある士(さむらい)だと頼もしい。
※画像はイメージです。
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