新しい怪異を考える〜婚活人間UMA説

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物を書くネタ探しや暇潰しなどで、掲示板やXのまとめサイトを見る事が多いのだが、まとめられる題材にも流行がある。
その中でも根強い人気があるのが、婚活に関する話題だろう。

婚活は正解のない場であるという前提を差し引いても、相手への要求が過剰過ぎたり、デートでの振る舞いが非常識過ぎたり、結婚相談所職員に横暴な振る舞いをしたり、といった人知を超えたヒーロー、ヒロインが、次々に登場する。

そんな時、ふと思うのだ。
この婚活記事の中で、話題にされる程の非常識な「婚活人間」は、実は人間ではなく、怪異の一種ではないか、と。

目次

婚活は定番コンテンツ

結婚、婚活は、歴史的にも人気の題材である。
伝承や童話という形で伝わっている事も多い。
例えばシンデレラは、そのまま婚活パーティーの物語である。

白雪姫にしても、無垢であり、無邪気である事が、結果的に格上の伴侶を見つけるのに役立つという筋立てになっている(その後の復讐はともかく)。
日本においては「一目千両」という、気に入った相手のためなら、金に糸目を付けるべきではないという、甲斐性に関する話がある。
鶴の恩返しも、「その先」があり得たとするなら、お試しで同棲している期間の話と言える。

さて、日本の昔話の中に、少々不穏な婚活話がある。

「めしくわぬ嫁」である。

ケチな男が「飯を食わない嫁なら欲しい」と言っていたところ、実際に「飯を食わない」という女が嫁になりたいとやって来た。
女は言葉の通り、男の前で飯を食う事はなかったが、実は男が留守にしている時、独りでこっそり飯を炊き、頭の口から喰らう化物で、その正体は鬼婆だったという。

昔話や民話の類には、一辺の事実が紛れている可能性がある。
これらの話から言えるのは、婚活という状況には、何らかの妖怪や怪異の類が紛れ込みやすいという事である。

喰ってこそ

生物的隙に入り込む怪異

婚活は、性欲の発露である。
現代のように多様な発散手段がない時代、性的欲求に対して結婚が果たした役割は極めて大きい。
欲求の発散中は、その事に集中するため、正常な思考が難しくなり、隙が生じる。
故に、怪異が付け込む可能性も高くなる。

こじつけと思うなら、考えてみて欲しい。
人々が睡眠に集中している夜にこそ、怪異、妖怪の類は活発に動く。
食欲も同様だ。食に集中する時、悪しき者が入りやすくなる。違うと思うなら、世にはびこる大量のオカルト健康食品を思い返してみると良い。それに、食中毒の中にオカルト由来のものがあるとすれば、食の隙を衝いたものだ。

これらと性欲も同じではないだろうか。
だとして、怪異が介入するのは、最中またはその前段階の婚活時である事は、火を見るより明らかだろう。
先の「めしくわぬ嫁」に登場した鬼婆も、何だかんだ言いつつ性欲を持て余していたケチな男の隙を嗅ぎ付け入り込んだ訳だ。

婚活人間の類型

では、ネットに流れる婚活人間は、一体どのような怪異なのだろうか。
女性タイプの怪異の場合、以下のような特徴がある。

高望みタイプ

適齢期を過ぎているが、平均を大きく上回るスペックや、非常識な要求を相手に期待する
相手が見つからず、結婚相談所で騒ぐ

晒しタイプ

紹介された相手と会うが、些細な事で嫌になったという話を、SNSに曝す
曝した件を叩かれてアカウントを消す

男性タイプの怪異については、以下のような特徴がある。

サイゼリアタイプ

年収は平均を上回る
マッチングした相手とのデートに、大衆店を選ぶ
支払いは割り勘にする

不細工タイプ

年収は平均を上回る
マッチングした相手とのデートに、不相応な衣類や清潔感で来る

「高望みタイプ」は、結婚相談所職員を名乗る者から発信される。
男性タイプは、相手女性または「晒しタイプ」によって発信される。

「ただの悪口では?」と思うのは待って欲しい。
私がこれらを「怪異」と定義づけるのは、その奇妙な再現性にある。

人間と仮定すると成立しない「婚活人間」

人間は学習する生き物だ。
非常識な要求が断られたなら、水準を下げていくか、要求自体を諦める。
マッチングされる相手は、自分の映し鏡だ。デートで期待外れだったとすれば、それは自分が今その位置にいるという事で、曝すのは自分を貶める事だ。

デートに大衆店を使うというのも、おかしな話だ。まともなリサーチ能力があれば、あからさまな大衆店は選ばない。昭和の漫画ならともかく、試し行動が卑劣なものというのは、現代の常識だ。
容姿に関しては、明治大正の見合いではない、写真の一枚もやり取りすれば良い。遭わなければ分からないというなら、容姿を呑んだ上のデートの筈だ。
つまり、これだけ世に曝され続けながら、それでも同じ滑稽なやり取りを繰り返し、彼らがコンテンツとして定期的に提供されるという事自体が、学習能力のある人間の行動として、はなはだ不自然なのだ。

だが、怪異なら、繰り返しは不自然ではない。

怪異は同じ行動を繰り返す傾向がある。
これは、怪異が生物的な存在ではない、と考えると理屈に合う。
オカルトが実在する前提の世界において、心、精神は物理的な力を持つ。

つまり、噂話などで怪異が語られる事によって、怪異は噂通りの姿として形成される。
噂が形になったものだから、それ以外の行動も姿も取れない。

量産される「婚活人間」

婚活人間という怪異も、これと同じではなかろうか。
最初は、ただの人間の、些細な行き違いだったのかも知れない。
だが、それを掲示板やSNSに発信し、幾度も引用される中で、存在を信じる者も現れ、噂として声に出される事もある。

「まとめサイトで読んだんだけど、婚活しているヤツに酷いのがいるらしくてさ……」

声に出された言葉は、言霊としてより強い力を持つ。
当然、バズ狙いで嘘を語る者も出る。
単なる承認欲求だけでなく、アフィリエイトによる営利目的で語る者もいる。

クラウドソーシングサイトにおける、ライター仕事の中には、バズりそうなネタは当たり前に募集されている。
「スッキリ系」「泥ママ系」などの並びで「婚活ネタ系」が募集される事も、当然ある。
媒体はSNS投稿の場合もあれば、ブログ記事、動画脚本の場合もある。
営利が絡む時、人の行動は確固たるものになって続いていく。

「仕事と割り切れば、頭など幾らでも下げられる」という話があるが、これと同じだ。

仕事であれば、どんな胡散臭い婚活人間のでっち上げも辞さない。
ある種のライターにとって、この「仕事」は、文章の技巧を見せる事に本義があり、その描かれる内容の真偽は、仕事を納品された業者が背負うだけのものだ。

それは、人間ではないかも知れない

こうして、多数の人々の意思は煮詰まり、怪異としての婚活人間が発生する。
それは現実世界とは限らず、ネット空間に巣くう電気信号的怪異の可能性もある。
怪異はネットワークを通じて移動し、この荒唐無稽な婚活人間という存在を、実在するものであるかのように思い込ませる、精神操作を行うかも知れない。

こういった怪異による攻撃に心当たりがある場合、防衛法を決めておくと良いだろう。
怪異は怪異と見破られる事を好まない。
従って、そういった記事を目にした時、呟いてみると良い。

「そんな人間、いる訳ないか」と。

参考
・まんが日本昔ばなし 〜データベース〜 一目千両
・民話の部屋「とんとむかしあったとさ」『飯食わぬ嫁』

※画像はイメージです。

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