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悲劇の「ロボトミー殺人事件」

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ロボトミー手術は前頭葉白質切截術と呼ばれる、精神病患者に対する外科的処置。
この手術は精神疾患の治療法として広まりましたが、深刻な副作用が発覚し、次第に悪名高い手術となっていきました。

日本でもこの手術を受けた事によって起きた「ロボトミー殺人事件」という事件があります。
経緯と背景についてを整理してみます。

目次

事件の概要

被害者のSは、正義感が強くて誠実な青年でした。
彼は裕福でない家庭に生まれ、幼少期から働きながら学業に励み、20歳で通訳として社会に出て幸せをつかむ筈だったのですが、親が病気になってしまい、看護の為に仕事を辞めて帰郷し家族を支えることになります。

故郷で土木作業員として働いていたのですが、会社が手抜き工事をしている事を知ります。
持ち前の正義感から告発しようとしましたが、貧乏だった事から口封じの賄賂を受け取ってしまったのです。
しかしそれだけでは済まず、報復として訴えられ、恐喝して金を取らえたと、実刑を受けて刑務所に入れられてしまったのでした。

これだけでも十分に不幸な身の上なのですが、さらなる不幸が襲いかかります。

出所後にスポーツライターとして実力を発揮していたなか、妹夫婦と親の介護について口論になり激高、乱暴な行為に及んで逮捕されてしまう。
本来であれば家族間の問題として片付けられるのですが、警察に対すして非常に反抗的な態度をとり、精神鑑定を受けざるをえなくなります。
その結果、Sは精神病質(サイコパシー)と診断され、精神科病院に措置入院を命じられたのです。

入院中に知り合った女性がロボトミー手術を受けて自殺してしまい、またもや正義感から執刀医に激しく抗議した事で危険人物とみなされ、半ば強引にロボトミー手術を受けることに。

手術を受けた事で釈放となり、スポーツライターに復帰。
ところが、手術によって感情や感性が鈍化し、かつてのような感覚で記事が書けなくなり、次第に自暴自棄に陥ります。Sは取材先のフィリピンで強盗事件を起こして強制送還されることとなりました。

帰国後、Sは自分の人生の変化をロボトミー手術の影響だと考え、執刀医に対する怒りを抱きます。
復讐を決意して医師の自宅に押し入ったのですが、当の医師が不在。代わりに家族を拘束して命を奪い、金品を持ち去るのですが、池袋駅で職務質問を受けて逮捕されてしまいます。


Sは逮捕後、再び精神鑑定を受け、その結果、責任能力があると判断されたのですが、脳内に手術用器具が残っているなど信じられない手術の粗さが発覚。
手術を受けるきっかけとなった精神鑑定も医師が決まりきった問診を行っただけの簡易なものであったことも明らかに。いくつもの不備が問題視され、Sの行動にどのような影響を与えたのかが議論の対象となりました。

Sは裁判で無罪または死刑を望みましたが、1996年に最高裁で無期懲役が確定。
ロボトミー手術を行った医師は、自身が行った手術が誤りであったことを認め、責任を取る形で医師免許を返上しました。

事件後、見えてきたもの

この一人の人生を変えてしまったロボトミー手術とは、いったいどんな手術なのでしょう。

ロボトミー手術は、1936年にポルトガルの神経科医によって始められました。
前頭葉の神経線維を切断すると暴力的な衝動を抑える効果があると、チンパンジーを使った実験で証明。
その結果から人間にも手術を行い、治療不可能だった精神疾患の患者に対する新たな治療法として注目され、発明した医師はノーベル医学賞を受賞しています。

アメリカ、イギリス、日本等で数万人単位の多数の人が手術を受けたとされ、もちろん当時においても、ロボトミーによる副作用は認識されていました。
患者の人数が多くロボトミーにかわる方法がなかったことと、何よりも手術が簡単だったのが要因ですが、それ以上に、患者の人格や感情に深刻な影響を与えることが次第に明らかになり、批判が高まり手術に対して人々は懐疑的になっていきます。

そして精神疾患の治療法が進歩する中で、薬物療法やカウンセリングが普及し、ロボトミー手術は次第に廃止されました。

恐ろしい手術

日本でも1975年にロボトミー手術は行われなくなりますが、たった50年前ぐらい前までこのような、恐ろしい手術が平然と行われていたのです。
Sが手術をうけた1964年には、日本でも30000人の患者が手術を受けていたという事実がかなり驚きです。

人間は都合のいい事を並べ立てて、ついには人間の尊厳までも奪ってしまう、そんな事件ですが、当時は最先端として世間で認められてた事も確かです。

もしかすると今の医療技術の中でも、未来ではそれが非人道的な治療法とされる事もあるでしょう。
この事件を通じて、医療の倫理性と患者の権利を守る重要性を再認識する必要があると思うのです。

※画像はイメージです。

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