これは数年前、夏祭りでの出来事です。
地元の小さな神社から、祭囃子の音が聞こえてくると、お待ちかねの夏祭りが始まります。
友人と夜店を回り、お好み焼きを食べ、クジを引いてハズレの景品にガッカリし、盆踊りの輪に加わって踊ったり。
お祭りを楽しんでいる時でした、急に周囲の音が聞こえにくくなったのです。
太鼓や人の声が遠くなって、自分の足音だけがはっきり聞こえ、さっきまでいたはずの人が見えなくなっていて、境内には提灯だけが残っていました。
友人の姿も見当たりません。
何が起きたのだろうと当りを見回すと、拝殿のお賽銭の前に小さな子供が立っていて、こちらをじっと見ています。
その子の口元が歪んで笑っているように見え、なんだか恐ろしくなって逃げ出しました。
その子は小さい笑い声を上げながら、あっという間に追いついてしまったのです。
「だーれだ」
背後から手で目隠しをした瞬間、なにもかもが解らなくなり、気がつくと、神社の社務所にいました。
畳の上に寝かされていて、友人が横にいて心配そうに見つめています。
どうやら途中で倒れたらしい。
私が起きたことに気がついた近くの大人の人がよってきて、貧血だから帰ったほうが良いよというので、そのまま帰宅しました。
それから
その日の夜、寝るときに太鼓の音が聞こえました。
最初は気のせいだと思いましたが、目を開けても聞えています。
まだお祭りが続いているのかな?と思っていると、視界の端に何かがいるように見えたので、はっきり確認しようとすると消えてしまいました。
貧血で倒れてしまったからだろう⋯そんな風におもっていたのですが、その日から毎日、同じ事が起きるようになったのです。
そして、次の日には、視界の端に見えていたのは子供だと分かりました。
部屋の隅に立って、こちらを見ているだけで動きません。
夢だと思っていると、日に日に近づいてきて、5日目には寝ている私のすぐ横にいるのです。
声が出せず、体も動かないので逃げる事ができません。
「だーれだ」
そう聞こえた直後、目を覆われました。
最初の時と同じで、気がついたら朝になっていました。
恐ろしくてたまらず、母に今までの事を話すと現実的な母は病院にいこうと。
診断
検査の結果、医師から病名は忘れましたが、脳の一部で発作が起きているような条第の可能性が高いと説明を受けました。
音や景色の感じ方が変わることがあること。
実際にはいない人物が見えることもあること。
記憶が途切れるのも症状の一つだと説明され、祭りの時のことも、その後の出来事も、すべて説明がつきました。
脳波検査や画像検査を行い、はっきりした異常は出ていないようで、まだ初期の段階の可能性が高い。
薬で抑えられることが多いと言われ、しばらくは様子を見ることになったのでした。
だた、それから、あの子供は出なくなりました。
太鼓の音も聞こえなくなり、生活は元に戻りました。
気になること
ただ、一つだけ気になることがありました。
数日後、友人がお見舞いがてら遊びにきてくれて、あの日の話になりました。
私が倒れた後のことです。
友人は、「社務所まで運ぶとき、ついてきてたよね子供は誰なの?」と言うのですが、意味が分かりませんでした。
そんな記憶はありません。
聞き返すと、友人は不思議そうな顔をしました。
「ほら、あの子。ずっと一緒にいたじゃん」
小学生くらいの子供だったと言います。
心配そうに、こちらを見ながらついてきて、私の目が覚める前に居なくなったそうです。
本当に脳の病気だったのでしょうか?
※画像はイメージです。


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