社屋の建て替え工事が遅れた理由

当サイトは「Googleアドセンス」や「アフィリエイトプログラム」に参加しており広告表示を含んでいます。

私がまだ東京で働いていた頃の話です。
当時勤めていた会社は、上野の外れにある古い木造の建物を本社として使っていました。
昭和30年代に建てられたらしく、建設された当時のままの内装で、妙に古臭い匂いが漂っていて昭和にタイムスリップしたような感覚に陥ります。

その中には、なぜか本格的な能舞台のようなスペースまでありました。
創業者の趣味だったのか、昔は何か催しでもやっていたのか、その辺りは知りません。
ただ、その舞台は妙に本格的で存在感があり、ちょっと近寄り難い場所でした。

この本社、春や秋はまだよかったのですが、夏と冬はまさに地獄。

東京はヒートアイランド現象でどんどん酷くなっていた時期だったにもかかわらず、冷房設備がなく、数台の扇風機を回して何とか凌ぐ有様でした。
日が落ちても室内は熱気がこもったまま、頭がぼんやりして、仕事をしているのか暑さに耐えているのか分からない状態になることもしょっちゅう。
総務の方が「現在の室温は三十四度です」と真顔で報告してきた時には、さすがに笑うしかありませんでした。

冬は冬で、頼りになるのは古いガスストーブだけで、窓際の席は指先がかじかみ、キーボードを打つのもつらい。
自前で電気毛布や足元ヒーターを持ち込む人もいたのですが、設備が古かったためか、冬になるとたびたびブレーカーが落ちました。そのたびに誰かが分電盤を見に行くのが恒例行事になっていました。

今思えば、よくあんな場所で普通に働いていたものだと思います。

目次

建て替え工事

さすがに老朽化が限界だったのでしょう。ある時、会社は本社ビルの建て替えを決定しました。しばらくは仮オフィスへ移転し、一年半ほどで新社屋が完成する予定だと聞かされました。
「しばらく待てばすぐに新しい事務所で快適に仕事ができる!」と誰もが喜んでいたのも束の間、どういうわけか工事は延期に次ぐ延期。
理由もよく分からないまま、社員たちは待たされ続け、ようやく新社屋完成の連絡が来た時には、当初予定よりかなり遅れていました。

出来上がった本社は以前の木造建築の面影など一切ない、四階建ての立派なビル。
ガラス張りのエントランスに自動ドア、真新しい石張りのロビーは明るく、館内は冷暖房完備で夏は涼しく冬は暖かい。あれほど苦しめられた暑さや寒さとは完全に無縁でした。
かつて扇風機数台で夏を乗り切り、冬はガスストーブの周りに人が集まっていた会社とは思えません。

各階にはエレベーターが設置され、会議室も広く清潔。
以前の本社を知っている者からすると別の会社に来てしまったような気分でした。
正直、少し寂しさはありましたが、それ以上に嬉しさの方が大きかったのを覚えています。

総務の方の話によれば

社員総出の引っ越し作業が一段落した頃、ふと気になって総務の古株社員に工事が遅れた理由を聞きました。
すると、少し声を落として。


 「地下を掘ったら、人骨が大量に出てきたんだよ」

一瞬、冗談かと思いましたが、本当だったようです。

地下階を作るため掘削していたところ、白骨化した遺体が次々に見つかり、警察が入り、調査が終わるまで工事は完全に止まったのだとか。

それともう一つ、今だから話せることだと言って、総務の方が教えてくれた話がありました。
旧本社では、夜間の見回りを担当していた警備員から、不思議な報告を受けることがたびたびあったそうです。

誰もいないはずの能舞台に人がいるような気配がする。
無人のはずなのに、ぼそぼそと話し声が聞こえる。
階段を誰かが下りてくる足音が聞こえる。

そのたびに侵入者を疑って、建物内を確認して回るのですが、どこを探しても誰もいない。

ところが、報告を受けている総務の方自身は幽霊の類をまったく信じていません。
古い建物なのだから気のせいだろう、怖いと思うからそう感じるだけだろうと、半ば馬鹿馬鹿しいものとして取り合っていなかったそうです。

ところが、建て替え工事の際に地下から大量の白骨が見つかった。
その話を聞いた時、総務の方は思わず「何だ、そういうことだったのか」と妙に納得してしまったのだそうです。

白骨の方々

調査によると、それら白骨は終戦前後に亡くなられた方々らしいとのことでした。
終戦直後、行き場を失った戦災孤児や浮浪者の方々が上野駅周辺に数多く集まり、貧困や飢え、伝染病などでよって命を落とす人も少なくなかった。
地下に埋められていた白骨も、混乱時期の犠牲者だったのではないかと言われています

発見された遺骨は、その後きちんと供養されたそうでなので、総務の方は幽霊が出ることはないと断言していました。
実際、私自身が在籍していた頃に幽霊を見たり、不思議な気配を感じたりしたことは一度もありません。

それでも、地下から大量の白骨が見つかったという話を聞いてしまうと、不気味に思えてしまったのは確かです。
供養によって皆さん成仏されたのでしょうか?
それとも、単に私にそういうものを感じる力がなかっただけなのでしょうか?

面白かった?

平均評価: 0 / 5. 投票数: 0

投票がありませんよ、最初の評価をしてね!

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

思った事を何でも!ネガティブOK!

コメントする

コメントは日本語で入力してください。(スパム対策)

目次