昔のお話

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戦後しばらくしていましたが、世の中がまだまだ混乱していた頃の話です。
私は山から木材を運び出す仕事をしていましたが、生活は苦しく、毎日が泥を啜るような心地でした。

ある夕暮れ、今の県境に近い峠のあたりで、道の真ん中に古びた背負子が置かれているのを見つけました。
その上には、泥に汚れた麻布で包まれた塊が乗せられていました。
落とし物かと思い、不用意にそれを抱え上げたのです。

その塊は、冷たいはずなのに、内側に熱を持った生き物のような弾力がありました。
布の隙間から見えたのは、皮膚が焼けただれて黒く変色した肉の塊で、それが細かく絶えず痙攣しているのが分かりました。

驚いて放り出そうとしたとき、背後から声をかけられました。
振り返ると、ひどく汚れた軍服を着た男が立っていました。男の顔は、中心に向かって皮膚が捻じ切られたように歪んでおり、目や口の判別もつきません。
男は、その肉塊が自分の肉親であると言い、麓まで運ぶように言ってきました。

私は逆らうことができず、木材と一緒にその塊を背負いました。
それは、本来の重さでは説明がつかないほど肩に食い込み、背後からは、肉が擦れるような音と、湿った吐息のようなものが聞こえ続けていました。道中、何度も足を止めそうになりましたが、振り返る勇気は最後まで持てませんでした。

麓の飯場に辿り着いたとき、私の背中には何もありませんでした。
しかし同僚たちは、私の姿を見て絶句しました。私の仕事着の背中が、人間の指の形をした無数の血の手形で埋め尽くされていたからです。
それから間もなく、一緒にいた人たちは、みんな亡くなりました。 病気だったり、事故だったり。
でも、あの頃は、そういうことが珍しくない時代でもあったのです。

私だけが、こうして生き残っていますが、おそらくそう長くはなく、あっちへ行きます。
最近、またあの背中の重みが戻ってきました。 部屋の隅に、あの絞ったような顔の男が立っている。
背負子を置いて、私を待っているような気がします。

峠の木挽き
おじいちゃんから聞いた話をそのまま文章にしました。

「奇妙な話を聞かせ続けて・・・」の応募作品です。
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※画像はイメージです。

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