まど・みちお作詞の童謡『ふしぎなポケット』内には、オカルティックなポケットが出て来る。
「ビスケット」を1つ入れてから叩くと2つになり、更に叩くと3つになるという。
「割れているだけ」という解釈があるのだが、実験してみたところ、1つから3つに割れてしまった。
ビスケット増加現象は、叩く「度」すなわち、回数に応じて発生すると報告されているため、個数で容易に例外が発生する「割れ」と別現象である事は確定的に明らかだ。
また、タイトルに「ふしぎ」が入る事も踏まえれば、質量としてビスケットが増加する、オカルト現象と考えるべきだろう。
伝統的食物増加譚
食べ物を増やすというのは、オカルトにおいてしばしば見られる。
新約聖書「マタイによる福音書」14章には、イエスが弟子達に指示してパン5つと2匹の魚を与え、集まった5000人以上(女子供を除いた数)を満腹させた上、パン屑を12籠分残したとされる。
これなら、ビスケットを増やす事は造作もないだろう。
アイヌの神話では、飢えに苦しむ人々のため、雷神カンナカムイの指示で、神々が柳の葉に命を与えて川に流し、それがススハム(シシャモ)に変じた。
笹の葉の質量をシシャモまで膨らませたのだから、1つのビスケットを2つにする事は充分可能だろう。
ギリシャ神話に登場するヒュドラは、9つの首を持つ大蛇だが、不死であり弱点の1本以外は切り落としても2倍の首が生えて来る。
上手く毒抜き出来れば、無限の食糧になる事は想像に難くない。
ビスケットを生み出す打撃力
だがまずは現実的に考えよう。
科学的に考えると、ポケットを叩いただけでビスケットが増える事はあり得ない。
質量保存の法則から考えれば、何発叩いたところで原子1つ生えて来る事はない。
だが、それは必ずしも完全に正しい事ではない。
我々は、エネルギーと質量は変換可能である事を知っている。
ビスケットは様々なサイズがあるが、イメージしやすいものとして、森永のマリービスケットを例に取ろう。
栄養表示によれば、1枚標準が5.4gである。
これをエネルギーに変換すると、485,327,796,517,881,525.6ジュール となる。
ツァーリボンバの最大性能が100メガトンで 420,000,000,000,000,000.0ジュールという事なので、アメリカのブラボー実験の15メガトン水爆を足すと、近似でエネルギー量が釣り合ってくれる。
すなわち、ポケットをその威力で叩くと、ひとまずビスケット1つ分のエネルギーはその場に生じた事になる。
科学が発達し、エネルギーから物質が作れるようになれば、ふしぎなポケットは充分実現可能という事が分かる。
今の時代は馬鹿らしく見えるかも知れないが、科学は日進月歩、人の想像するようなものは大抵実現可能なのだ。
想像力故に、人は鳥を遥かに超え、月に到達するほどに飛び上がれた。だが、それが現実となるまでの期間は、オカルトで説明した方が良い。
人の心は、未知に耐えられるほど、強くはない。
オカルトの導入で、話は単純になる。
ふしぎなポケットは、神々の奇跡に見られるような力によって、ビスケットを生成する、と結論付く。
歌詞が日本語である以上、ビスケットをもたらす存在は、日本神話に連なる神の筈だ。
日本神話で、食糧を出してくれる神といえば、大気都比売(オオゲツヒメ)だ。彼女は自らの肉体の様々な穴から食べ物を生み出せる。
キーになるポケットを叩く行為も、柏手と考えれば理屈に合う。だとすると、使用可能なポケットも特定される。
神は尖った葉に棲むとされ、榊や樒にその性質が見られる。
尖った部分のあるポケット。すなわち、ジーパンの後ろポケットが最適解と言えるだろう。
尻ポケットと考えたのは、あくまでポケットの形が根拠であり、その他の理由はない。
邪推は禁物だ。

ふしぎなポケットの使い道
歌の主人公はふしぎなポケットを欲しがっているが、実際に「貰えた」場合、どのような事が起き得るだろう。
どんどんビスケットが作られるため、ビスケット業者として大儲け出来るだろうか。
——それは無理だろう。
食品衛生法において、ビスケットを生じさせるポケットは、製造のための「器具」と定義される。
そして器具に許される原材料材質別規格には、
- ガラス、陶磁器、ホウロウ引き
- 合成樹脂
- ゴム
- 金属缶
これだけであり、ポケットに使用されるであろう「布」「繊維」はない。
食品衛生法が提示するものは「して良い」リストであり、それ以外の全ては「してはいけない」と考えるため、ポケットで作ったビスケットを売ってはならないのは自明である。
では、売らずに周囲の人に配るなら良いだろうか。それは問題ない。
だが、世の中には善意を曲解する者は必ず出て来る。
「タダなんだからもっとよこせ」
「食べ過ぎてお腹をこわした」
「おいしくない」
等々、善意を打ち砕くに充分な言葉が浴びせられる可能性が付きまとう。
配布は心から信頼出来る相手に限り、決して手を広げない事が肝要だ。
実在するかもしれない、ふしぎなポケット
お気づきだろうか。
つまり、ふしぎなポケットは実在していても、公表されにくく、非常に気づき難いのだ。
あなたの隣人や知人、はたまたあなたの当たり前に着ている服に、付いている可能性もある。
或いは・・・・まど氏こそが「持つ者」だったのかも知れない。
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