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毒素というオカルト物質

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「デトックス」とは、一体何を取り除いているのだろうか。
「デトックス」の語源は「解毒」、つまり「毒」を除く事だ。業者も「毒素」が排出されると書いている。

日本の法律における「毒」は、「毒劇法 別表」が示す27件と、政令指定された具体的な物質である。
だがそんなものが体内にあるとしたら、命にかかわる。
ならば今日、今から、直ちにデトックスを!?

慌てなくても良い。
「毒」ではなく「毒素」だ。
「塩」と「塩素」も別物だ。
「素敵」と「敵」だって違う。
だが、「素麺」は「麺」ではないか?
やはり危険なのだろうか?

毒ではないが、身体には有意に悪いっぽいらしい。となれば結論は1つ。
「毒素」とは、未だ科学が解明出来ないオカルト物質だ。

目次

物理的存在としての毒素

デトックスを標榜するサイトにより、毒素についての説明は様々だ。
曰く、化学物質、環境ホルモン、有機水銀、カドミウム、ヒ素、タバコの煙、排ガス、食品添加物、カビ毒、除草剤、腸内細菌が作り出すアンモニアまでありとあらゆる「なんか悪そう」なものが出て来る。
これを見ると、「毒素」は物質だったようだ。

――ここに一片の疑念が生まれる。

日本には世界有数の食品衛生基準がある。
前述のカドミウムの場合、1週間の摂取許容量は、体重1kgあたり、7μgだ。そして、一般的な人の推定摂取量は中央値で2.2μg。普通の人はカドミウムを許容量の半分も摂取していない。
この摂取許容量は、「生涯にわたる蓄積」を前提にした安全基準値が決められている。

つまり、カドミウム排出のための処置は一生不要という事だ。そもそも排出すべきものがない。量がゼロではないにしても、影響はゼロだ。
いや、問題はカドミウムではなかった。
オカルト物質「毒素」の話だ。

デトックスは毒素にのみ怒る。カドミウムが無害だろうが、邪知暴虐の毒素は除かねばならぬ。
デトックスには科学は分からぬ。

毒素を退くす

では、毒素を取り除くため、ミスター・デトックスは何をするのだろうか。

水をたくさん飲む、カロリーを控えめに、適度の運動で汗をかき、サウナで水分を減らして病人を取り除き、そしてこの商品を食べる。
なるほど。

それから、足をこの謎装置に付けると、ほら、足から身体に超悪い水酸化鉄が出て来た。
なんと、これが毒素であったか!
にくいやつめ!

・・・それは本当だろうか。

まず、経口摂取するサプリについて考えよう。
毒素が溜まると言われている部分は、脂肪細胞、血管。これが2大巨頭だ。

消化管にあるものなど、毎回の消化でリセットされる。腸管は綺麗なものだ。さもなければ、便があんなに整った形にはならないし、検便の「表面を取れ」という指示がナンセンスになる。

脂肪細胞や血管にある毒素が、どうして消化管から排出出来るのだろうか。
体内の免疫系が、毒素を引き剥がして消化管に持って来てくれるのだろうか?
だったら普段から蓄積しないではないか。

摂取した健康食品が、免疫系に働きかけ、毒素を引っ張り出しやすくするのだろうか。
それはいけない。
免疫活動をねじ曲げる食品があったとすれば、それはもう医薬品だ。
身体を侵襲する物質でしかない。

自然由来だろうが伝統ナンタラだろうが、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)」に該当するもので、食品として売れば違法性を問われるに十分なパワフルな物質だ。

それでは、足から?

謎機械で足から毒素が出るのもおかしな話だ。
何も、人体で2番目に分厚い表皮が付いている部分を使う必要もない(1番は頭頂部)。

そして出て来る物質は鉄だ。
血液に山ほどあるもので、こんなものを出しても意味がない。ひょっとして、何も出ておらず、機械装置の中の金属がイオン分解されているだけじゃあないのか?

結論から言えば、科学装置によるデトックスは存在する。
血液については「人工透析」であり、呼吸については「人工心肺」だ。

万が一、それに類するデトックス上の発明を彼らがしたとして、「何故それを学会で発表しないのか」という疑問がある。
標榜している通りの毒素を取り除けるなら、どれほどの人が救われるか知れない。

それをせず、独占して金儲けに利用する以上、彼らの価値観は、

金 > 他人の命

である。

そんな彼らの売り物が、どれだけ信用出来るだろうか。
発言力の低い一般人相手には、半分ほどの確率で症状が悪化する成分を混ぜるだろう。
何しろ金の方が命より重いのだ。
大切な人の為に全財産を投げ出すのと同じだけの真摯な情熱で、彼らは金のため他人の命を使おうとするだろう。
その為なら、どんな汚い事だってやるし、世界全体を敵に回しても構わないだろう。

そろそろ良いだろう。
デトックスを標榜するものは、根拠のないインチキか、危険物である。

効果があるなら、標準治療になっている。
あらゆる物質や手法に貪欲で、時に非人道的実験も辞さなかった世界中の医療研究者が、「箸にも棒にもかからない」と打ち捨てた残りカスしかない。

そこから新たな「ペニシリン」を見つけられるのは、同類の研究者だけだ。
デトックス業者が「水素水」というワードアートの影の位置を調整しているのと同じ時、研究者は2万匹目のモルモットの肝臓を乳鉢ですり潰していたのだ。

本物の「毒素」が実在したら?

ここからがオカルトである。
だとして、「本物の毒素」が実在し、そしてそれを取り除ける「本物の商品」が存在した場合、一体それはどのようなものになるだろう?

毒素は、既存の化学理論では説明出来ない有害物質

何故なら、既存で有害な物質は、医療が見つけてしまうからだ。
そして、

オカルト装置は、毒素をピンポイントで除去しなければならない

当然である。
人体に完全に取り除いて良いものは、基本的には存在しない。
脂肪が不用と思うかも知れないが、これをゼロにしたら人は死ぬ。
個々でバランスが違い、環境によっては必須になる。

そういうものを、一律でいじるような装置は、絶対に人に害を及ぼす。
ダイヤルを捻りすぎるだけで人を殺せる装置は、死刑執行官か医療従事者にしか任せられない。

物質的な部分は科学に任せよう。
物質は「毒素」ではない。
その上で、絶対的に人に悪をもたらすなら、それは魂の領域だ。つまり、

毒素=悪霊

である。

だとすると、真に「毒素」を駆逐し得るのは、お祓いなどの霊的な対処であろう。
自分の信じる何者かに、毎日願ったり祈ったり言霊で宣言したりすると、多分毒素は抜けるだろう。
仮に抜けなかったとしても、別に身体は悪くはならないであろう。
何しろ、毒素に物理的な力はないのだ。

物理的な物質でなく、悪霊でなく、どうしても調子が治らないようなら?

医者に行こう。

前の医者が何もないと言っても、セカンドオピニオンというものがある。

※画像はイメージです。

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