電話がもたらす根源的恐怖

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2025年5月28日の東洋経済ONLINEによれば、電話が苦手な、いわゆる「電話恐怖症」は、20代で約75パーセントに達するという。

「若い新入社員が電話を取らない」といった年配社員の愚痴が掲載される記事も、何度か目にしたように思う。
人付き合いに慣れていないとか、SNSの弊害とか、色々な分析がされているが、目に見える部分だけに着目するのは、不充分かも知れない。

この電話嫌い、電話恐怖というものは、古くからの人類全体に関わる性質や文化に由来するものではなかろうか。

目次

電話恐怖の原因

人間が何かを恐れる時、科学的な理由と、文化・オカルト的理由に大別される。
まず、科学の面で電話を恐れる理由について潰しておこう。

1つ目は、相手が見えない事による、本能的な恐怖。

電話は相手の姿が見えない。
これは、暗闇で獣に対峙しているのと変わらない。恐怖は、その危険を知らせるアラームとして機能する。
電話相手は、肉体的に負傷させる事はないが、社会・心理的ダメージを与えてくる可能性は十分ある猛獣だ。
どんな鋭い牙を持つか、どんな発言に怒り出すか分からない、攻撃の兆候も観察困難、これに恐怖心を抱かない人間は、むしろサバンナで死に絶える側だ。

2つ目は、言われた事にすぐ判断して反応しなければならない事へのプレッシャー。

恐怖をより大きく感じる電話は、予定されたものではなく、いきなりかかって来るものだ。
これは、傍らの藪から毒蛇が飛び出して来るようなものだ。これに恐怖を感じられなければ、ジャングルで呆気なく死に絶えるだろう。

3つ目は、失言への恐怖。言葉尻を捉えて炎上させるというSNSのマナーである。

即時性を求められる電話は、失言発生装置と同じだ。相手が録音して切り抜き、SNSにアップすれば、それだけでデジタルタトゥーが出来上がる。
これに恐怖を抱けない人は、インターネット空間で真っ先に炎上、焼死する。

4つ目は、経験不足による、未知の作業に対するストレス。

上記3点による恐怖は、電話使用を躊躇わせる。

電話しかなかった時代は、それでも使わざるを得なかったが、電子メールやSNSなど、文字や映像など、上位互換に近い通信手段が実現した。
結果的に、電話を使う習慣が極端に減り、恐怖感が更に増す事になる。

未知の作業に慎重になるのは当たり前だ。これを無警戒で進めてしまうようでは、容易にスノーブリッジを踏み抜き、クレバスに落下しかねない。北極圏では、真っ先に死に絶える個体だ。

通信手段の最初は手紙

オカルト由来の電話恐怖

会社にとって、電話は極めて重要な通信手段だ。
その効率を著しく下げる電話恐怖などというものを、人類の叡智が集合する財界が放置する訳がない。
あらゆる先端技術が導入され、電話恐怖を感じさせない電話や人間にしていった筈だ。
にもかかわらず、今ものうのうと電話恐怖が残存しているというのは、これはもうオカルトに由来を求めるべきだろう。

科学でフォローしきれない部分は、オカルトにしておく。オカルトにする事で、インスタントな結論が出て、心を落ち着けられる。
これが、人間が文化に負わせた役割だ。

では人は、電話にかかわるオカルト要素の、一体何を恐怖しているのだろうか?

第1に考えられるのは、言霊だ。

言霊は、音声で発した言葉そのものが力を持つという、神道などに見られる概念だ。
電話時の発言は、全てが言霊となり得る。そして、それが自分のところと相手のところ、同時に2倍発生する事になる。

自動車のアクセルを踏んだら、2倍のスピードが出てしまうとすると、恐ろしくてソロソロ踏むしかないし、加減を掴むまでは乗りたくなくなるだろう。
これと同様に、普通に喋っているつもりが、二重の言霊を発しているという警戒心が、恐怖を喚起し、電話を避ける心を生むのではなかろうか。

第2に、相手の顔が見えない事。

電話は、喩えテレビ通話であっても、相手と繋がるまで相手の顔が見えない。
これは、のっぺらぼうとコミュニケーションしているのと同じだ。

伝承では「遭遇した人間が驚いて目を回してしまう」というパターンが散見される。口がないため牙はなく、人型のため鋭い爪もなく、あまり危険性がない筈なのに、だ。
つまり、のっぺらぼうは、恐怖のみを喚起する、精神攻撃に特化した存在であると言える。

この恐怖が人類文化に根付いていると考えれば、電話嫌いは寧ろ自然な事だ。

第3の理由は、声を相手に利用される事だ。

人は正体不明の相手と遭遇した時、まずは息を呑み、言葉を発さない。
オカルトに理由を求めるなら、これは、驚いて口から抜け出る魂を留めたり、漏れ出た言葉を呪詛に悪用される事の回避と考えられる。

童話『眠り姫』の「糸車の呪い」のように、言葉は相手を呪うトリガーになる場合がある。
録音機器が発達した現在、言葉は、一部を切り貼りして、どのようにも変えられるので、呪詛の材料に勝手に使われる恐れは十分ある。
使いたいヤツには使わせておけ、と思うかも知れないが、呪いは失敗した時、かけた者に返って来る。

リスクの多い呪いの安全装置として、あなたの声が利用される可能性は十分あり得る。

電話恐怖は正常?異常?

電話にオカルト的恐怖があると受け容れた時、これを解消する為にどうすれば良いだろうか。

これは、オカルト事象を防御するための方法を用意しておくと良い。

具体的な方法は、あなたが信じられるなら何でも構わない。
お札や聖水、パワーストーン、呪文やお経、お祓い、それらによって防護がされていると感じて、それで電話への恐怖が僅かでも和らぐなら、効果があったと言って良い。
それでも、どうしても電話が怖いというのであれば、これは上司に相談するか、業務手順の中に電話が入らない形を自分で作ってしまうと良いだろう。

筆者も前に働いていた会社で、客への電話連絡の大半を郵送に切り替えてしまったものだ。
これによって、客からクレームが入る事はなかった。

手抜きだの逃げだのと気に病む事はない。
何しろ、電話嫌いは若者特有の傾向ではない。
全世代平均でも、その過半数が電話嫌いなのだから。

参考
・東洋経済ONLINE 営業なのに「電話が怖い…」、若者に広がる「電話恐怖症」のリアル。電話が苦手な部下に上司はどう対応すればいいのか?(2025年5月28日)
・MYNAVI News PREMIUM(LIFE)Z世代社員が電話を怖がるのは「真面目すぎるから」? 心理的ハードルを高める要因とは(2025年11月6日)
・ウィキペディア のっぺらぼう、言霊
・XLingual くしゃみの後の“Bless you” 。その由来とは?

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