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妖霊星は、鎌倉幕府滅亡を告げたか?

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アニメ化された『逃げ上手の若君』が人気のようだ。
実際に視聴してみたところ、かなり面白い。
以前から漫画タイトルだけ耳にしていたが、改めて作者が脳噛ネウロの人と知って納得感があった。

さて、当作品の始めの方のシーンでかなり「残念な人」に描写をされていたのが、主人公の北条時行の父にして、鎌倉幕府最後の執権、北条高時である。
史実で足利家が勝利した都合上、彼の描写はネガティブにならざるを得ないが、そのネガティブエピソードの1つに「妖霊星」に関するものがある。

目次

妖霊星を見ばや

『太平記』によると、元弘2年(西暦1332年)に、相模入道(北条高時)が酔って田楽を踊っているところに、正体不明の田楽士の一団がどこからともなく現れ参加し「天王寺のやようれぼし(妖霊星)を見ばや」と歌い、その後消えてしまった。
それを聞いた儒学者の刑部少輔仲範(藤原仲範)は、「天下が乱れる時に妖霊星という悪星が落ちて災いを成す」と言ったという。
妖霊星は彗星の意味とされる。

田楽士が何者であったか明言されていないが
「翅があり山伏のような姿をした者」
「嘴があり、カラスのような者」
「禽獣の足跡多し」
「異類異形」
「人は一人もいなかった」
とあるので、天狗に率いられた妖怪、狐狸の類と言いたいのだろう。

日本における天狗は、山岳信仰の神であり、仏教と相容れないために妖怪扱いされている。
山の神が星を語るのは奇妙に見えるが、天狗の語は中国大陸から伝来したもので、それが意味するところは「流星」である。

「狗(イヌ)」たる所以は、時に大きな流星が空中で爆発する音を、鳴き声に見立てたのだという。
つまり、太平記の描写は、「天に近しい場所に属する凶神からのお告げ」が、妖霊星を知らせていたという表現だ。

妖霊星はどの彗星なのか?

だとすると、この時予言されていた妖霊星とは、何だったのだろうか。

周期彗星の中で、最も活動的で観察しやすいものといえばハレー彗星だ。
しかし、これが接近したのは1301年、次は1378年なので、鎌倉幕府滅亡の1333には当てはまらない。
というより、北条高時の生きている期間(1304〜1333)に、観察出来るタイミングがなかった。
他の比較的名の知られる周期彗星も、周期的に当てはまらなかったり、近代以降に見つかったもの(つまり、肉眼で見つからないほど光が弱い)だったりする。
非周期彗星の方がまだ期待が持てそうだが、非周期だけに情報が乏しい。

ただ、太平記の妖霊星は、どちらかというと「流星」と考えるべきだろう。
さもなければ、「落ちる」という表現と噛み合わない。
もし、彗星と考えてしまうと、その妖霊星は「落ちて」来ないのだから、災いも起こらない道理で、凶兆にならない。

この時代に彗星と流星がそこまで明確に区別されていたか、という疑問もある。
妖霊星という名前の中に、周期性を表す文字もなければ、尾を引くというニュアンスもなく、おおよそ彗星の特徴を捉えていない。
ただ妖しく、霊に関わるような、「なんかやべえ星」という以上の名に見えない。
「彗星は、いきなり空に現れ、すぐに落ちない、人魂のような訳の分からん流星」
という程度の認識と解釈した方が収まりが良い。

もっとも、流星の記録から辿ろうとしても情報は薄い。
結論だけ言えば、1333年に歴史的な流星というのは記録されていない。
直前で861年の福岡県の直方隕石、直後で1492年のエンシスハイム隕石があるが、言い伝えも残らないほど離れてしまう。

従って、妖霊星は実際は発生しなかったか、発生しても専門家界隈が気付く程度、歴史にも残らない小さいものだったのだろう。

違う方の彗星でありコメットさん

もし妖霊星が出ていたら

さて、妖霊星が実際に発生し、オカルト的な存在だとして、鎌倉幕府にどのような影響を与えただろう。

流星の場合、ごく小さなチリの場合がほとんどで、隕石として地球に到達する場合も、石ころ程度のサイズがせいぜいで、それを超えると大災害になる。
記録に残っていない以上、流星は石ころサイズ以下だろう。
オカルト文脈では木石が力を持つ事はあるが、大きさにある程度比例する。塵芥のサイズでは期待出来ない。

彗星の場合なら、核のサイズは直径1〜10km程度で、流星よりはかなり大きい。
直接落下を除外した場合、地球に1番影響を与えるのは、尾が接触する事だろう。
だが、彗星の尾は見えているほど濃いものではない。
1910年、彗星の尾に含まれるシアン化合物により、地球生命が死滅する、といった説が提唱された事があった。だが、実際は微量すぎて大気に紛れ、何の影響も与えられていない。

では彗星核の中に閉じ込められた生物や霊などにより力を持つ場合はどうか。
霊が宇宙全体で統一的なものであるなら、地上にある霊の方が遙かに多くなる。圧倒されるのは、彗星の方だ。
何しろ、彗星核は山1つよりも質量としては劣っており、棲み着いている生物、すなわち魂の数も地球と比べれば桁違いに少ない。

何かしら影響を与えるとするなら、彗星が現在観測されているような自然物ではなく、他文明による人工物である可能性を盛り込む他はない。
すなわち、魔法と見分けが付かないほど、高度に発展した地球外生命体か、その宇宙船である。

彗星と魔法、そう。
妖霊星が、真に北条高時に影響をもたらしていたのだとすれば、そこにはコメットさん的知的生命体の存在が示唆されるのである。
無論、メテオさんでも良い。

参考:
国立文書館デジタルアーカイブ『太平記』(第五巻 P.15)
wikiソース『太平記』書き下し文

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