九州グリーンランド「お化け屋敷」のルーツ

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ここで扱う「心霊スポット」とは、九州地方にある遊園地「グリーンランド」の敷地内で現在も営業しているお化け屋敷を指す。
70年代に作られた、当時はよく見かけたフューチャーレトロを思わせる展望台。
それがなぜ「心霊スポット」になったのか、地元の知人たちの話も織り込んで解説していく。

目次

わが街の心霊スポットのあゆみ

ウィキペディアの沿革情報および各種資料を確認すると、三井グリーンランドは1966年7月に開業しており、問題の建物は1971年(昭和46年)4月頃に完成している。鉄筋コンクリート造の展望施設で、開業初期から現存する数少ない建築物の一つである。
現在の視点から見ても、この建物には特徴的で前衛的な意匠が確認できる。もっとも、こうした未来志向のデザインは決して特異なものではなく、当時は中銀カプセルタワービルなどに見られるように、抽象的、実験的な造形の建築が各地で試みられていた時代である。

この建物について確認できる正式な名称は、建物自体に残された「シンボルタワー」という文字のみである。
文書資料や記録にそれ以外の名称が明記された例は確認できず、少なくとも現時点で実在が確認できる呼称は、この建物に残された表記に限られる。

シンボルタワーは園内のゴルフ場に隣接する丘の上に建てられ、リフトでアクセスする構造となっている。
周囲にはゴルフコースのクラブハウスやホテルが配置されており、一般来場者向け施設というより、ゴルフ利用者を主な対象とした立地を想定したと考えられる。実際、最上階の窓はゴルフコース側に向けて設けられており、背後の遊園地側は階段と採光用の開口部だけが見受けられ、眺望を楽しむ設計にはなっていない。

1991年に撮影された映像資料からも、一般入場客が利用する施設であった形跡の確認が難しい。
室内の構成や使われ方から見て、主に運営側や関係者を対象とした用途で使用されていたと考えるのが妥当だ。
当時を知る複数の関係者の話でも、この施設で遊んだ、あるいは一般客として利用したという話を聞いた事がない。
心霊にまつわる話は、確認できる範囲では存在しない。

今と様子が違う遊園地の周辺

建設当初の遊園地は、現在の景観とは大きく異なっていた。
ゴルフ場はかつての炭鉱住宅地を転用したもので、遊園地側も炭鉱労働者の社宅が点在する立地であった。
当地にある炭鉱を経営していた三井鉱山の子会社、三井三池開発株式会社が開業したこの遊園地は、近隣各県の炭鉱従業員とその家族を主な対象としたレジャー施設であったといえる。つまり、炭鉱労働者とその家族のための遊興施設としての性格が強かった。

運営体制も現在ほど厳格ではなく、近隣住民の回想によれば、無料で園内に入れる“抜け道”が黙認されていた時期もあったという。経済的に厳しい家庭が多かった時代背景もあり、従業員側も暗黙の了解としてこれを見過ごしていた。
炭鉱では、まだ内風呂が珍しかった時代、従業員用の風呂を家族で利用したり、隣の町まで坑内の人員輸送用の人車にのって買い物にいったなどのエピソードがあり、全体的に緩かったこともあるだろう。

親子でタダ乗りしたエピソードも残っているようで、1970年代中盤まで、炭鉱に雇用される家族の利用に関しては、このように大目に見られる側面があったそうだ。

1970年代は日本各地でオカルトブームが起こり、心霊スポットも多く誕生した時期であるが、この遊園地に関して心霊絡みの噂があったという話は、この年代でも住民の証言上では一切確認できない。

心霊スポットと化した原因

グリーンランドは、プレイガールQ、西部警察、特救指令ソルブレイン、ウルトラマンティガなど、当時の人気ドラマのロケ地としてが利用されたことがある。しかし撮影中に事故はなく、撮影後も関係者に心霊現象めいた出来事の報告されておらず、1990年代の時点でも、この場所に幽霊に関しての噂は存在しなかった。

ここが心霊スポットとして認知される直接のきっかけとなったのは、2001年に放送されたテレビバラエティ番組『USO!?ジャパン』である。読者から投稿されたオカルト関連の噂を紹介する番組で、この回では「シンボルタワーには幽霊が出る」という話が取り上げられた。

放送では、エレベーターに幽霊が出るとの設定でアイドル2人が現地取材に赴き、心霊現象の検証を行うという構成が取られた。VTR内では、エレベーター内部で幽霊に憑依されたかのような演技が行われ、深刻な雰囲気のまま「体調不良を理由に収録を中断した」とする演出で締めくくられている。その後はスタジオに戻り、MCが「憑依された」という設定のままアイドルに感想を訊ねる流れで番組は進行した。

この『USO!?ジャパン』という番組は、タイトルがすでにネタバレである通り、「すべて噂話をもとに構成され、真偽は不明」という姿勢を売りにした娯楽番組だった。事実確認は前提にない。嘘でも誇張でも、視聴率が取れれば正義という、当時のテレビらしい番組である。

ところが視聴者の多くは、「テレビで紹介された」という一点だけを根拠に、それを事実として受け取ってしまった。内容の真偽ではなく、媒体への信頼が先に立ったわけだ。
施設名は一応伏せられていたが、周辺住民から見れば失笑もので、あのボカし方で分からないはずがない。むしろ、わざと稚拙に情報を隠すことで、「何かを隠している=本物らしい」という錯覚を生んだ可能性すらある。
そこへ、全国的な影響力を持つアイドルの発言力と、当時急速に普及し始めていたインターネットが重なって、あっという間に拡散され、全国区の「心霊スポット」として定着していく。

当然、地元住民にとっては腑に落ちない話だ。前日まで、心霊の「し」の字すら存在しなかった建物が、ある日突然、全国的に有名な心霊スポットへと変貌したのだから。
だからこそ、地元ではこんな疑念も囁かれた。この時代にそぐわず、集客に苦戦していたレジャーランド側が、施設をお化け屋敷として再生するため、テレビ局と話をつけ、宣伝目的で番組に使わせたのではないかと。
証拠はない。だが、そう考えたくなる程度には、この一連の流れは出来すぎているからこそだ。

心霊スポットアトラクションへ

「シンボルタワー」が完成した当初、白い外壁に奇抜な装飾を施したその姿は、いかにも未来的で、率直に「格好いい建物」だったと記憶している。
リフトと展望台という組み合わせのアトラクションも、開園当初は物珍しさがあった。しかし、より刺激の強いアトラクションが次々と設置されていく中で、次第に存在感を失っていく。地味で単調なリフトに乗り、わざわざ展望台まで行こうという客は減り、やがて忘れ去られた施設となった。

時が経つにつれ、雨だれや汚れ、経年劣化が目立ち始める。整備されなくなった外観は、かつての未来的な印象を失い、次第に「不気味」と形容される雰囲気へと変化していった。

転機となった2001年の『USO!?ジャパン』放送から数年後の2006年、建物は「廃校への招待状」として、ウォークスルー型のお化け屋敷に転用された。
おそらく1999年に開業した、ふじQハイランドのお化け屋敷戦慄迷宮にあやかったものでもあると思われる。

いずれにせよ、お化け屋敷へ転用される前後の「シンボルタワー」がどうなっていたのかだが。
園内で孤立している場所にあるとはいえ、建物の近辺にはパノラマ展望台や空中ブランコといったアトラクションが存在するので、移動手段としてリフト自体は稼働していたようだ。ただし、その時期に「シンボルタワー」がどのように扱われていたのかが記憶にない。
それは裏を返せば、来園者にとって気にするほどの存在ではなかったと言える。

それが、虚実入り混じる心霊体験談も相まって、本当に出るオバケ屋敷として集客に成功した。
「心霊スポット」として語られるようにもなり、結果として九州の心霊スポットBEST10にランクインするまでになってしまった。
ここで重要なのは、「もともと幽霊の噂が存在していたのか」という点である。
結論から言えば、これは否定される。建設当時から運営初期にかけて、少なくとも公式記録や確認可能な資料の範囲では、幽霊や怪異に関する噂は存在しない。事故記録や死亡事故、事件性のある出来事も確認されていない。

つまり、心霊の噂は後付けだ。
建物の老朽化、メディアによる演出、そしてインターネット上での拡散が重なった結果として生まれた、二次的なイメージに過ぎないのだ。

近年でも、全国放送のバラエティ番組による取材も行われる事がしばしばある。
しかし、遊園地側はこれを明確に否定しない。状況を理解したうえで、役割を終えていた建物をオバケ屋敷として再利用したのである。

心霊スポットが収益を生み、地域経済に寄与するという構図は、日本ではそう多くない。
そして現在も、この建物は「本当に出るらしい」と人を集め続けている。
長年この遊園地を知る地元の人間としては、それを素直に喜ぶべきなのか、それとも胡散臭い話として距離を取るべきなのか、判断に迷うところではある。

参考:
『九州経済月報』1971年6月号(九州経済調査会 昭和46年6月1日発行)
wikipedia:グリーンランド (遊園地)

※画像はイメージです。

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