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人類と共にあったひょうたん小僧

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最近、NHKの『おかあさんといっしょ』の話題を目にし、番組内の着ぐるみ人形劇が新しくなっている事に気付いた。
自分の記憶にあるのは「にこにこぷん」だったが、今は「ファンターネ!」だそうだ。
その中に、殻付きピーナッツのような「やころ」というキャラクタがいた。改めて設定を見ると、彼はひょうたんなのだそうだ。

ひょうたんが喋ったり動いたりするのは何とも異様だが、実は既に妖怪にひょうたん由来のものがいる。
ひょうたん小僧である。

目次

妖怪・ひょうたん小僧

ひょうたん小僧の名は、「江戸の水木しげる(逆)」こと、鳥山石燕が『百器徒然袋』に記したのが最初とされる。
『百器徒然袋』は、室町時代頃から描かれた妖怪ジャンル『百鬼夜行絵巻』を元ネタとし、そこで扱われた妖怪達を題材にした妖怪画集である。
石燕は伝承などの根拠がない妖怪を、ゼロから創作することもある人物だが、『百器徒然袋』については多少なりとも元ネタがある。

実際、ひょうたんの妖怪は、『百鬼夜行絵巻』に描かれている。
ひょうたん小僧は頭部がひょうたんになったような人型の妖怪である。
植物としてのひょうたんではなく、道具として使われていたひょうたん容器が化けた、付喪神タイプの妖怪であると考えられる。
ただ、これが鍋釜などと同様、単に道具であるから妖怪として登場したかというと、そうばかりとも言えない。

別方向からも、妖怪になるだけの根拠はある。

ひょうたんは長い友達

ひょうたんは、古くから人類と共にあった植物である。最古の栽培植物の1つであったろうとも言われている。
カンピョウ原料のユウガオなどの例外はあるが、ひょうたんの果肉は有毒のものが多いため、多くが器目的の栽培である。
ひょうたんの果実は内部を腐らせても外側が残り、自然の器として使える。

道に空き缶が転がっているような現代なら「それがそんなに重要か?」と思うかも知れないが、「器がない」という状況は非常に物事を困難にする。
自分の肉体だけで水10リットルを10メートル動かすのに何往復必要か、想像してみると良い。

ひょうたんの原産地はアフリカ、インド、タイなど熱帯地域であったとされる。
人類が有史以前から栽培する過程で、いわゆるひょうたん型と呼ばれるくびれた形の品種も定着した。
アフリカでは今でも生活に密着した形でひょうたんが利用されている。大型の丸いものを器や皿、ひしゃくの他、楽器にも使っている。

ベナンでは民話にも登場し、割る事で財をもたらすアイテムになっていた。
似た発想は東洋にも存在し、中国では縁起物とされ、日本でも日本書紀に記載が見られる。
つまり、人間の文化の根底にそもそもひょうたんがいた、という事である。

ひょうたんの中には何がある?

それほどのひょうたんが、何故、妖怪になり、「見れば死ぬ」と言われるような百鬼夜行に参加していたのだろうか。
これは、ひょうたんの重要性と性質から推察できる。

ひょうたんを手にした古代人は、初めて液体の保存を覚えた。
水を貯め、これで水を汲みに行かなくてもしばらくは大丈夫、そう考えたろう。
ひょうたんの器が増えるごとに貯蔵量を増やし、貴重な食糧でもある動物の血液を貯めてみた事もあったかも知れない。

その先にあるのは——腐敗である。

見えぬ器の底から、今までの常識では考えられない腐敗物が発生する。
自然環境であれば、直ちに分解された腐敗物も、器に貯めてしまえばかなりの長時間、目の前にあり続ける事になる。

その驚きと嫌悪、誤って口にした時の食中毒の苦しみは、人類の魂に深く刻み込まれただろう。
そして、腐敗は発酵と同種の現象である。
ひょうたんに詰めた果汁や小粒のベリー類が醗酵し、アルコールを生じた事もあっただろう。

木のウロで猿酒が偶然出来たというプロセスよりも、ずっと確実で神秘的である。
この何とも魅力的な酒という物質は、人類を引き付け、酩酊により現実と異なる風景をもたらした。

液体を運ぶには

神と悪魔の間に

人はひょうたんの中に人は悪魔と神を見た。
人を助けるものであるのと同時に、何が出て来るか分からない恐怖が常に付きまとう。
やがて、腐敗や醗酵の法則性を理解した人々は、正しいひょうたんの使い方を覚えた。土器を発明した事で、ひょうたんの役割も限定的になっていった。

だが、魂に刻まれた恐怖は、容易には消えない。

ひょうたんの飲み物をまずはコップに移さないと気が済まないような、慎重な個体だけが生き残った。
恐怖はひょうたんが海を越え、日本に至った時も残っていた。

当然である。
文化ではなく、遺伝に深く刻み込まれているのだから。

故に、日本においても、人はひょうたんを敬いつつも恐れた。
特に、日本で広まったのはくびれた形の、奥が最も見にくい種類だ。その暗さは、原初の畏怖をより強く呼び起こしたろう。
そんなひょうたんへの感情が、敬いと恐れの間で揺れ動く妖怪に至ったのは、単なる偶然ではなかろう。

ひょうたんの底に映るもの

ひょうたん小僧は、悪とも善とも結論が付けられず、これといった伝説のない妖怪である。
それはまさしく、利益にも不利益にもなるひょうたんの性質そのものだ。

ひょうたんの口から中を見つめる時、貯まった液面に映るのは結局あなたの目だ。
やころを見た時、何となく不気味、気持ち悪いと感じたなら、「そんなものを出すな」と番組にクレームを入れるより前に、まずは自らを省みる事も重要だろう。

参考
ウィキペディア ひょうたん小僧、鳥山石燕、百器徒然袋
YouTube【週末縄文人】自然の土から器を作る ♯3
堤根神社 伝承〜浮かびのひょうたん

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