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要りませんか?

妻に言ったが、直ぐにでも行きたかった。この事は悟られないように我慢するしか無かった。まるで、その時の私は、恋する青年のような感情を心に抱いてしまった。
待ちに待った時間が来た。踊るような気持で、スーパーに行った。店内で三十分近くウロウロしたが、目指す彼女は現れなかった。肩を落として帰宅する事になったが、本当に重い足取りだった。帰宅途中、何度も何度も溜息を漏らしていた。

「あんた! いったい何を買ってきたの!肝心の菠薐草は? 何しにスーパーへ行ったの。私の嫌いな肉買って来て・・・アホ違う!」

帰宅早々、妻の強烈な罵声を浴びた。とんまな私は、彼女の事で頭が一杯になっていた。頼まれた筈の菠薐草を買い忘れていた。然も、何を思ったのか妻の大嫌いな肉を五百グラム買っていた。
「ご免な。あんたの大切な旦那を、そんなに怒らんでも良いのと違う?」

私は謝るしか無かった。しかし、今後はこの様なヘマをしないように心に誓った。
次の週、彼女と会えるかも知れないと淡い期待を抱いて、再びスーパーへ行った。だが、店内を三十分程、ブラブラしたが、彼女の姿を見付ける事は無かった。肩を落として帰宅すると、

「いったい何を買いに行ったの! 仕事もしなく、そんなに暇な筈は無い筈よ」
妻の恐ろしい声が家の中に響いた。まさか彼女に会いに行ったとは言えず、
「何か安売りが無いかと思って・・・・」

口五月蠅い妻に程々疲れた。
翌週、恋狂いになった私は、用事も無いのに、再び、あのスーパーへ行った。
だが、一時間程、店内を行ったり来たりしていたが、目当ての彼女の姿は無かった。肩を落として帰宅したが、彼女への思いは更に深まった。
性懲りもなく、次の週にも儚い期待を持ちスーパーへ行った。そして、特売売り場で彼女のとの出会いを待っていた。しかし、会う事は出来なかった。まるで、恋に狂ったような後期高齢者だった。私の病気は重篤状態に陥った。

数日後、
「オイ! 先週スーパーへ買い物に行った時、お前が食べたいと言っていた白烏賊を売っていたのを見付けたぞ。何なら今から買いに行こうか?」 
昨日、些細な事で妻と喧嘩になってしまった。機嫌を損ねていた妻への罪滅ぼしの行動だったが、あの手この手と気遣いに苦労していた。

妻は事ある毎に、白烏賊を一度だけでも食べたいと言っていた事を思い出した。白烏賊は、その辺の烏賊より少し値が張った為に買うのを躊躇していた。しかし、改装祝いと機嫌取りに思い切って奮発しようと試みた。
「嘘ッ! 白烏賊だったら食べたい。私もスーパーへ連れて行ってよ!」
単純な妻は、顔を崩して喜んでいた。しかし、七面鳥のようにコロコロ顔が変わる妻に呆れたが、
「判った。しかし、高価だから一杯だけにしてくれ。台所の改装で少しでも節約しなければ」
「白烏賊ぐらいで、ケチ臭い事を言わないで、白烏賊は安価な物なのに何よ! ダイヤを買ってくれとは言っていないのに、あんた、本間にアホ違う!」

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