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「おじ様御免なさい。ここで長いいは出来ませんの。家族が心配するから」
彼女と別れたが、年甲斐もなく私は幸せを感じていた。
ある日の夕方、疲れを癒す為に、知人と近所の居酒屋で酒を飲んでいると、
「オイ、知っているか? 二年前の事だが、君が時々行っているスーパーの前で、若い女性が車と接触して命を落とした事を知っているか? 確か・・・・彼女の歳は二十三歳か四歳だと記憶しているが、運転手は二十歳の男で無免許だったという話だ。本当に馬鹿な奴だ!」
憎々しく言った。

「本当に可哀想な話だ。まだまだ楽しい人生が有ったのに・・・・悲しい出来事だ」
聞くに堪えられない気の毒な話だった。しかし、私には関係ない話だった。その為、何時しか記憶から薄れていった。
三週間後、再び、彼女に会えるかも知れないと儚い気持でスーパーに行った。
その日も特売のスペースを見ていると、その日は珍しく商品が置かれていなかった。エッと思って、落胆した顔をしていると、
「袋要りますか?」
声を掛けられた。振り返るとあの彼女だった。然も、相変わらずUniqloのワンピースを着て満面笑みを蓄えていた。しかし、会う度に同じワンピースを着用していた為に抵抗が有った。この若い女性は、お洒落に気を遣わないのが、私には理解出来なかった。だが、この時もその事はお首にも出さなかった。私は軽薄な人間では無かった。更に、彼女を傷つけるような言葉を
吐くつもりは無かった。
「オッ! 君か?・・・・今日も要りませんよ。エコバックを持参していますから」
笑いながら彼女に言った。
「それより、先日は珈琲有難う御座いました。大変美味しかったですよ」
「イヤイヤ、こちらこそ楽しい時間を有難うございました」
「アラッ! それより今日は特売は有りませんよ」
「今日も楽しみに来たのに。まあ、君に会えたから良かった。もしも、会えなかったらと思うと寂しくて」
「まあ、嬉しい。それより時間は有りますか? 良かったら、又、珈琲戴きたいのですが? 厚かましい事を言って済みません。若いから持ち合わせが無いので」
「いいですよ。行きましょう。私は年金もたっぷり貰っているので、お金の心配は要りません。しかし、鬼嫁が家で首を長くして待っているので、三十分程しか付き合いが出来ませんが? それで宜しいですか?」
「又、大切な奥様をその様に言って。奥様に知れたら大変ですよ」

その時の彼女は、少しだけ寂しそうな顔を見せた。
私達は恋人のように手を繋ぎ、ランラン気分で、珈琲ショップの暖簾を潜った。
「最近、居酒屋で知ったのだが、君はこの事件の話を知っているかな?」
珈琲を一口含んだ後、私は友人から聞いたスーパー前での悲しい話を突然、思い出していた。
「何か有りましたの?」
「あのスーパーの前で、二年前に交通事故で女性が亡くなった話だけど、可愛そうな事だね」 
話が終らない内に、優しさに満ち溢れていた彼女の顔が、みるみるうちに険しい顔になった。しかし、私は彼女を侮辱した覚えは無かった。何故、その様な苦しい顔に変わるのかと思っていると、

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